角川ホラー文庫から出たノンシリーズもの。三津田氏自身がその知り合いなどのコネクションから得ることとなった民俗学者のノートと、それに関係していそうな別の怪異憚で構成されており、大まかに2部に別れている。三津田氏がノートを手にすることになるまでの話もそこそこの長さであり、3部に分かれているとも言える。なお元AKB48の板野友美主演で映画化されている。

のぞきめと呼ばれる妖怪がメイン。何らかの形でそれに取り憑かれてしまうと、家でも何者かに観られているような感覚を覚え、ついには精神に変調をきたしてしまうという。じわじわと恐怖が迫ってきそうでそそられる題材である。

序章ではさすがに博識の三津田氏が「のぞきめ」やその周辺情報、さらにはのちの賞で語られる怪異憚をいかに収拾したかが語られており、実は個人的にはここが最も面白かった。裏話という体になるわけだがもっともらしくノートを得ることになるくだりは禁忌への道を辿っていくような気分になる。

第一部が学生バイトが山中の貸別荘の手伝いに雇われ、別荘オーナーの忠告を聞かずに危ないところに行った結果怪異に遭遇する話。逃げても逃げられない凄みがある怖さが魅力の内容で、これだけを単独の短編としても十分成立している。

第二部はノートを遺すことになった民俗学者が友人の訃報をきっかけにその友人の生家がある村まで行き、村の独特な風習に戸惑い、やはり怪異に遭遇するという内容。土着ホラーでこういうのは本当に三津田氏は上手く、情景が目に浮かんでくるようだった。
この話もかなり面白い内容だったが最後がかなりの駆け足。ホラーで終わらずミステリー要素を加えて一気に謎解きまでしていくのには驚いた。

全体的に面白く、もっと長くてもよかったと思う。さらに掘り下げてこの世界に浸っていたかったとすら思える名作。